第9話  幻の蝶々貝

 電車の宿を出て走り出すと外は清清しい天気、快晴であった。
少し走ったところに牧場があり、そこに馬がいた。
僕が近づくと、親馬が子馬に何か告げているようだった。そして子馬の方が僕に挨拶しにきた。顔だけ見せるとその馬はすぐ親馬のところに戻った。

「べつに嫌やったらワザワザこっちに来なくてもいいのに。馬にも社会があるねんな・・・。」

そしてまた僕も走りだした。

海沿いの道を走っていると、またたくさんのライダーやチャリダーがすれちがった。

僕は同じ方向に向かっている二人組チャリダーに声をかけにいった。

「襟裳岬までですか?」

「はい。」と二人組のうちの一人がそう答えると
「僕も襟裳岬です。頑張ってください。」

そう言って僕はその人達と追いこしていった。「早く襟裳に着きたい。」という気持ちと今日は夜間走行はしたくないという焦りで僕のペースはかなり上がっていた。

そして、えりも町のとなり町である様似町(さまにちょう)に入ってトンネルを超えたとき、海と二つの岩の綺麗な景色が広がっていたので、そこで休憩をとることにした。

 そこは親子岩というちょっとした名所らしい。
僕が休憩しているとこの辺りに住んでいる人らしきちょっと老いたオッチャンがはなしかけてきた。

「いや~北海道にやっと夏がきたという感じだよ。」

今年はまだこんなに晴れたことはなかったようだ。僕が北海道に来てからもも今日ほど快晴の日はなかった。そんなこともあって僕もやたら気分が弾んだ。

「いい所っしょ?ここは。」

「はい!」
オッチャンの言うことに僕がそう答えるとそのオッチャンは去った。
そして僕も再び自転車に跨った。

もうすぐついにあの襟裳岬に着く。
蝶々貝は拾えるだろうか。
例の百人浜のキャンプ場はどうなのだろう。
走りながら考えていた。

そこから数十キロ走ってぼくはようやく襟裳岬にたどりついた。

夕日に照らされていた海は眩しく輝いて見えた。

浜では中学生の女の子が制服を来たまま漁師の仕事を手伝っていた。

 その眩しく輝いた岬を僕は自転車で登っていった。

「襟裳岬」という名所看板の近くにはみやげ物屋があり、そこでは森進一の曲、「襟裳岬」が延々と流れていた。
「・・・・そのままやんけ。」
一人でツッコミを入れた。

↑塀を登ってるのは僕ではありません(^-^;

買い物を済ませて少し走った場所に「襟裳岬ユースホステル」という案内板が見えた。

「こんな近くにあるのか・・。そうか・・またユースに泊まるのもいいな。例のキャンプ場はちょっとコワイし・・^^;」

反対方向は海。夕日が海の上に光っている。僕はその夕日が二つに見えた.
「あれは蜃気楼か?」

そう思って僕はその夕日をじっと見ていた。
するとそのとき、バイクに乗った女の人が走ってきた。

Vol.2 RUN-10 Episode 9