その後札幌の市街の入りはしたが、僕に観光をする暇などはなかった。ただ、ひたすら夕張につながる道である国道274を探した。
札幌のキツイ日差しの中、R274に合流した時はすでに午後二時は過ぎていた。
「とにかく今日中に夕張へ」
そう思って僕はひたすらに走った。
札幌を抜けるころ日差しはゆるくなり、かわりに強風が目だってきた。
さっきまで暑いと感じていたくらいなのに急に寒くなってきた。
あまりの強風のせいか、僕の体は少しまいってきたので次のコンビニで休憩することにした。
そしてコンビニに入る途中の道、僕はとある気温表示板を見て目を疑った。
「じゅ・・・、17℃???ウソやろ?」
寒いはずだ。あわてて僕はウインドブレーカーを着た。
「それにしても夏で17℃とは。やはり北海道やな・・。」
次に走りだしたころにはもう人の気配は少ない山道へと向かっていた。
追分町を超えて、ついに夕張市に着いた頃は日はすでに沈んでいてわずかな夕日の光だけが残っていた。
そこはいい景色だったが僕はここからさらに20kmほど離れたキャンプ場を探すことに必死だったため、とてもそれを楽しむ余裕などはなかった。
「こんなに暗くなってしまってはキャンプ場を見落とす危険性がある。しかも街灯はない。まさしく真っ暗だ。」
不安に包まれながら僕は時々見える街灯の灯りを見ては少し安心して走っていた。
目的の場所は幸福の黄色いハンカチキャンプ場という変な名前のキャンプ場だった。
真っ暗の中、慎重に走りながら僕はようやくそれらしき場所を見つけた。
でもそこでキャンプしてる人など一人もいなく、受付らしき場所にも誰一人いなくて、そこには不気味な雰囲気が漂っていた。
疲れていたのでもう走るのは嫌だったが、さすがにそこに泊まる勇気はなかったので仕方なくもう一つのキャンプ場を目指した。
その場所から1~2kmほど先に進んだ場所でやっとこキャンプ場らしきキャンプ場についた。
時刻はすでに夜の9時近くになっていた。
僕は今からでも受付が間に合うか心配だったがそこの受付まで行った。
受付はなんとか終えることができたが僕はテントを張る力さえなくなりかけていて、ヘロヘロの状態でノロノロとテントを張っていた。
すると、さっきの受付で会った管理人のおじちゃんが僕の疲れた様子を見ていたのか、
なんと自分の食事用であろうたくさんのオニギリをわざわざ僕の張っているテントの所まで持って来てそれを僕にくれたのだ。
「いいのですか?」
それをもらうのが申しわけなく思った僕はそう言った。するとそのオジサンは
「私にもアンタみたいな息子がいるから・・・」
それを聞いた瞬間、僕は涙をこぼしそうになった。
暗く淋しい道を体力の尽きそうになるまで走ってきた後の僕にそんな言葉はたまらなかった。
「本当にありがとうございます。」
疲れてはいたがそのことで嬉しさでいっぱいになった。
このことは多分一生忘れることはないだろうと感じた。
テント内でようやくシュラフ(寝袋)に入ると隣のテントから子供の声が聞こえてきた。ファミリーキャンパーらしい。とても楽しそうだった。
でも下ネタばかり言っていた。
「やはり子供やな・・」
僕はようやくその疲れきった体を休め、眠ることができた。
次の朝、目が覚めて出発の準備をしていると、昨日は真っ暗の中キャンプ場に入って、周りの景色もあまりよく見てなかったので、「ここはこんな場所だったのか・・・」と改めて感じた僕だった。
Vol.2 RUN-08 Episode 7