第10話
「幸福駅」
1996年8月6日、襟裳岬を出た僕は百人浜で蝶々貝を拾う暇もなく北上した。(まあ、蝶々貝は昨日ユースで手に入れたからよかったが。)昨日の天気とは違い、今日は雨は降っていなかったが、曇り空で肌寒く感じるほどだった。
今日の目的地は帯広。距離的に言うと、今日のスケジュールがこの旅の中で一番キツイ日だろう。
R336に乗り広尾町に入り、そこからはR236を走った。
この日のことは夏なのに寒いと感じるくらいであとはひたすらに走ったという記憶しかないほどだ。とにかくたくさんの村を通過した。そしてその村と村の距離がやたら長かったことは覚えている。
そういえば道の途中で昨日の女の子を見かけたりもした。(挨拶だけして通りすぎたが)
走るに走って目的地の市内にある幸福駅にようやくたどり着いた時はすでに夕方だった。
その幸福駅という今は使われていない鉄道の駅のこと。名前が縁起がいいということから駅だけはそのまま残されていて、鉄道マニアや男女カップルなどに人気のある場所であるようだった。
鉄道マニアでもある地元の友達、ライダーNが、たしかここの駅のことを絶賛していた記憶があったのでちょっと寄ることにした。
そこに行くとみやげなど売っており、切符も今日の日付で買える機械までもが残されていた。
そこに走っていた電車もそのまま残されていた
「こりゃ鉄道マニアが喜ぶ訳やな」
そう思いながら僕は一応その切符を買った。
切符だけを買うと僕は先を急いだ。幸福駅から西へ走った所にあるキャンプ場が今日の目的地であるが、少しでも北上しておいたほうがその後が楽になるし、その北上した場所である池田町には温泉も多く、ワイン城というのにも興味があったので予定を変更して、池田町まで頑張って走ることにした。
結局今日も夜間走行となった。池田町に着いたのは夜8時ころだった。僕はまだキャンプ場を見つけていなかったがそれを探しているときに見つけた銭湯に入ることにした。とにかく風呂は入れるときに入っておかないと明日行く場所に風呂があるとは限らないのからだ。
だが僕は風呂に入る時、重要なことを僕は忘れていた。
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それは昨日の襟裳までの道は快晴だったため僕は半ズボンで走行していたということだ。普段露出しない部分を長時間日にさらしたので僕の足は赤くなり熱を持つほど焼けていたのだ。
それでも僕はぬるいお湯で体を洗ったためか、ヒリヒリする足もさほど気にならなかった。
だがしかし!いざ湯に入ってに2~3歩歩いた時、その日焼けの痛みが全身に走り、動けなくなったのだ!
「うおおおおぉぉぉ!!」
湯船の真ん中で立ち止まり必死に痛みをこらえた。それを見ていた周りのおっちゃん達は「あ~あ」という感じで笑っていた。
僕はなんとか痛みをこらえて湯につかった。
そうして銭湯での戦闘が終わったあとキャンプ場を探した。
しかしそのキャンプ場はかなり坂道を登った場所にあったので結局汗をかいた。
「せっかく風呂に入ったのに・・。人生うまくいかないね~」
と僕はテントを立てて、そして寝ることにした。