第17話
「閃光のように」
8月17日。この日の景色は僕には素晴らしかった。
これといっては何もないごく平凡な空と海と大地だけの風景なのに・・・。
快晴で清清しい朝に僕は出発した。
釧路ユースを後した僕はさらに東へ向かった。
多少のアップダウンのある海沿いの道を僕は快適に走った。
眩しい日差しが岬の芝生の緑、そして海の青を輝かせている。
僕は鼻歌でも歌いたい気分になった。
果てしなく続く広い道に、海から吹く風。
雄大に広がる景色を体いっぱいに感じる。
そんな想いに包まれる中、僕はこの美しい大地を一人占めしてる気分になった。
この時初めて自由を実感した気がした。
僕を縛るものは何一つない。
僕が北海道に来た理由が今初めて
「これだ!」
と感じた瞬間だった。
しばらく走ると今度は木々の中に入ったり出たりの道になった。
気がつくとハンドルにあるバーに引っ掛けておいた帽子に赤いトンボが止まっていることに気がついた。
下り坂のとき結構風が来るのにもかかわらずそのトンボは離れようとせずしばらく僕と共に旅をしていた。
空も海も太陽も大地も、
そしてそんな小さな生き物までもが今ここで生き生きとそして堂々とその存在を示しているように感じた。
すべてのものが生きていると実感した。
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今まで僕に会った何人かは
「一人で旅なんてそんな淋しいこと・・・」
という人もいたが、
僕そうは思わない。確かに淋しい時もある、しかし
一人にならなければ感じられない喜びを覚えることがある。
それが僕にとっては今日のような日なのだ。
今日は目的地である霧多布岬のキャンプ場に着くまで一日中快適な時間だった。
明るいうちに霧多布岬キャンプ場に着いた僕はとりあえずチェックインを済ませた。
が、そのキャンプ場はホンマ全くただの岬だった。
しかも風が強いこと。
テント張るのも苦労したが張ってから中に入ってても風の音がビュンビュン鳴っていてどうも落ち着かなかった。
そういえばあのライダーNも
「霧多布岬のキャンプ場は風が強い」
と言ってたことを思い出した。
とりあえず、まだまだ暗くはならない時間だったので僕はまた明日のルートを確認しようとテント開けたまま地図を見ていた。
すると、僕の張ってるテントは岬の上の方だったがその下前方にテントを張ってるチャリダーらしき人物を発見した。
いや、本当言うと僕はさっきからずっとその人の存在には気がついていたが僕はわざとその人の近くにテントを張らなかったのだ。
なぜなら彼のテントはその岬の一番下の柵の近くに張っていて、その柵には自分のシュラフを干していたりして、なんか生活感むき出しだったしそれに・・・なによりの理由は・・・