第15話
「逆パノラマの温泉」
8月13日、足寄を出発した僕は、オンネトーという湖に行くためさっそく山道に入った。
ちょうどその時に僕と同じ方向に進んで行くオッチャンチャリダーがいたのでその人に僕は手を振ってその後、先を急いだ。
オンネトー湖は足寄から阿寒湖に向かう途中にある湖だが、その美しさは相当なものであることは例の本、サイクル野郎2500キロにも紹介されていた。
僕は期待しながらその場所を目指した。
でもさすがに山道なだけにそう簡単にはたどり着くことはできなかった。
そして、ようやくその湖、オンネトー湖にたどり着いたとき、僕は驚いた。
「これは湖か・・・?」
エメラルド色に輝くオンネトー湖は僕を魅了した。
そんな湖でも、地元の人が言うには、
昔はこの湖を見るのにはそれこそ車一台進むのも困難な道をひたすら走り、やっとお目にかけることの湖であったらしい。
でも今はあらゆる車や観光バスなどが入りこめるほどに道は舗装されて、そのありがたみがなくなったとか。
しかし僕にはそれでも素晴らしい景色だった。
いつまでも僕はこの綺麗な湖を見ていたかったが、今日は阿寒湖のキャンプ場に泊まるという目的があったため、僕は先を急いだ。
僕がちょうどこの湖を出ようとした時、足寄あたりの山道で会ったチャリダーオジサンがオンネトー近くまで自転車をこいでやってくる姿が見えた。
僕はその人に再び手を振り、阿寒湖に向かった。
オンネトー湖から阿寒湖まではさほどの距離はなかった。阿寒湖でキャンプ場を見つけた僕はひとまずテントを張った。
今日は日が明るいうちに余裕でキャンプ場に入ることができたのでのんびりしていた。
しばらくして僕はお風呂屋さんを探そうとその準備をした。
するとまたさっきのオッチャンチャリダーが僕と同じキャンプ場に入ってきた。
「君、速いね~」
そのオジサンは僕にそう言ってきた。
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スピードを求めず、ゆっくりと旅を続けてきた僕だったが、いつのまにか山越えというのが苦痛ではなくなってきていたことに僕自身が気付いた。
「そうか~。今までいくつもの山を越えてきたもんな。俺はいつのまにか速く山道を走れるようになってたのか・・・」
そう思った。
僕とそのオジサンとの会話ははじまり、それから一緒にお風呂屋さんを探すことになった。
まあどうでもいいことだが昨日も今日も、その場で知り合った人と一緒に風呂に入ることになるとは・・^^;
お風呂屋さんはそのオッチャンが見つけてくれた。お風呂屋さんというよりは市民プールの施設の中に風呂が入れるというような感じだった。
入浴中もその人と僕の会話は続いた。
「君何歳?」とオッチャンが僕に尋ねてきた
「20歳です。ハタチこえてしまったのが嫌なんです。」と僕が言った
「俺は34歳、言っとくけど30歳越えるともっと嫌だぞ。」
その後お互いどんなルートで旅をしてきたのかという話になった。
するとその人は札幌出身で、一周間の休みの中、「札幌~摩周湖を自転車で往復する」ということを会社の同僚の人達に宣言したところ、同僚の人たちには「絶対無理。」と言われたことがしゃくに触って「それならやってやろう」ということで、この旅をしているらしい。
負けず嫌いな人だなと思った。