摩周湖の展望台から山を下って行くころは日が完全に落ちて、真っ暗になっていた。
しかも霧のためさらに視界は悪く、数メートル先でさえ全く何もみえない景色が続いた。
僕はこのとんでもなく静かで真っ暗な道を、時々来る車のライトを見ては少し安心し、わずかに見える道路のセンターラインの白をたよりに進んだ。
そう。度重なる夜間走行のせいで僕の自転車のライトの電池はすでに切れていたのだ。
時々来る車の光が無い時は、白く塗られた道路のセンターラインがわずかに見える以外は何も見えなかった。
恐怖の中僕はようやく山を降りた。
あとはキャンプ場に戻るだけだがその距離も決して短くはなかった。
さすがに山ではないだけにさっきのような真っ暗な道ではなかったので恐怖心は去っていたが体は疲労していた。
走りつづけると僕はある灯りを見つけた。
それはその町で行われていた小さな祭りだった。
それを見た僕は急にほっとした。
「ああ、人がたくさんいる・・・。」
別にその人達と言葉を交わすわけでもなかったが、僕はなんとなくその場所を離れたくなかった。