第16話
「健気な像」
大雨にはならなかったが小雨が常に降っているという状態が続いた。
思わしくない天気のせいで、僕のテンションも下がり気味になっていた。
計画表を見ると、今日は釧路まで行く途中にあるキャンプ場に泊まると書いている。
「もう今日は15日なのか・・・。」
僕はこの北海道ツーリングのちょうど折り返し地点の日である今日が来てしまったことが嫌だった。
今までは計画表を見るたび、僕が走った日数よりも、残り走らなければならない日数の方が多いことが嬉しかった。
そう、「まだまだ半分も走ってないのだ」という気持ちでワクワクしていたのに、これからはただ減って行く残りの日数を見て旅しなければならないのだ。
「・・・そういえばこの前半の旅で、今まで行きたいと思っていた所はもうほとんど行ったよな・・・。」
函館、室蘭、札幌、夕張、襟裳、富良野、層雲峡、足寄、摩周湖、を前半のうちに走破してしまった僕はこれからの後半の旅で何を目標にして走ればいいのかが分からなくなりかけてきていた。
重い空気の中、僕は雨に濡れたペダルをゆっくりと踏んだ。
「いや!まだ俺は日本最東端と最北端にもたどり着いてないのだ!きっとまだまだ楽しみはある!!」
と、気合を入れなおして走った。
その時!ふと、ある物が僕の目に入った!!
僕の見た物は、そう、Hな本自販機であった。(パートⅡ)
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「ぬう!ここで会ったが百年目!今こそあの時の無念を晴らてやるわ!!」(ラオウ口調)
そこはこの前とは違い、国道で、車も絶え間無く通っていたのにもかかわらず、僕は強気で攻撃をかけた。
「ZEROの名において命ずる!出でよHな本!」と、僕はお金を入れてボタンを押した!
自販機は僕の執念に観念したのか、今度は素直に反応した。
「ふははははははははははははははーーーーーーーーーーーーー!!」
本の内容はイマイチだったが、初めて自分から買ったということで僕は1歩成長したような気がした。
満足した僕はさっきまでの淋しさから少し逃れる事ができた。
それからしばらくしてキャンプ場を見つけた。
テントを張る時もずっと雨は降り続いていた。
結局その日の雨は止むことはなかった。
次の朝起きた時、雨は止んでいたが、天気はまだそれほど回復はしていなかった。
テントをたたんだ僕は再び釧路に向かって走り出したのだった。
今日は8月16日。釧路までの走行距離は約24km。
目的地は釧路市街を通過して15kmほど西へ進んだ所にあるキャンプ場。
「う~んせっかく釧路に行くのに市街地から離れた所に泊まるのは面白くないな・・。」
と僕はまた気まぐれを起こして今日の目的地を釧路のユースホステルに変更した。
盆という時期にもかかわらずその予約は無事に取ることができた。
「よし、これでゆっくり釧路の町を見物できるな・・・」
自転車が進むにつれて天気は回復へと向かい、釧路湿原に着いたころにはアスファルトの路面は完全に乾いていた。
巨大に広がる釧路湿原を後にした僕は、再び釧路市街を目指すべく、国道391に向かった。
その途中の道で僕は反対側から女の子チャリダーが走って来るのが見えた。
「こんにちは!」
お互いに挨拶を交わした。