第2話 ニセコアンヌプリ-1

第2話
「ニセコアンヌプリ」

翌朝は心地よく目覚めた。街灯の光が明るすぎて眠れなくなることを多少心配したが。
僕は朝食をとろうとガスストーブに火を着け米が炊けるまでしばらくボーッとしていた。

するとまたまた知らない青年が話しかけてきた。

その人は大阪からヒッチハイクでここまで来たらしい。そして僕に椎名誠さんの文庫本を
「読み終わったから、どうぞ。」
と言って渡してきた。僕は読書の趣味はないし要らなかったのだが、かといって「要らない」というと失礼な気がしたので貰っといた。
(椎名誠さんファンの方スイマセン)

それにしてもつくづく変わった人が多いな~と思わされるこの北海道であった。(まあこんなところをチャリで一周しようとしてる僕もそのうちの一人だが。)


朝食をとった後、出発の準備をしていると、そこの湖でボートやカヌーを楽しんでいる人が見えた。
「いいなぁ」
僕もいつかはそういうのを目的にしてここを訪れたいものだと思いつつ、昨日洗濯して乾しておいたシャツを片付けようとした。
 すると・・・

「な?なんじゃこりゃー!!」

街灯の側に自転車を置き、ハンドルに洗濯したシャツを引っ掛けて一晩中乾かしてたせいか、そのシャツには卵の白身みたいな液体がぐっちょりと着いていた。
何かの虫に産み付けられたようだ。急いで水洗いして、なんとかキレイにはなったが、どうもそれを着る気にはならなかった。(何日か経ってから雑巾にしたか捨てたと思う。)

僕にはどうもこんな間抜けな事が付いてまわるらしい。(それは当然僕がマヌケだからであるが。)

結局大沼で一度もアブと遭遇せずに、その地を去った。(よってありがたいアドバイザーに勧められて買った虫除けスプレーは役に立たなかった。)

 今日のスケジュールは大沼⇒長万部、約72kmコース。楽勝のはずだったが思ってた以上にバテた。今回は高2の時の紀伊半島ツーリングとは違い、半袖の時は日焼け止めクリームを携帯していたが残念ながらその効果は大したことはなかった。

3時頃に長万部に到着したが、すでにヘトヘトだった。
ラーメン屋で食事を済ませたあと、いったんキャンプ場へ行き荷物を軽くして、近くにある温泉に入りに行った。昨日は旅館の風呂を日帰り入浴として入らせてもらったので少し気を使ったが、今日は、温泉が目的の人ばかりなので、気兼ねなく入った。

キャンプ場までの帰りしなの国道を自転車で走っていると、車から小さな女の子が

「がんばって~!」と手を振ってきた。

「え?俺に言ってくれてるのか?」
一瞬そう疑ったがどうも間違いないらしい。
そんな時、僕は体力など残ってないはずなのに、急にスピードが上がり、元気に手を振り返した。なんならキャンプ場にある本来積んでいる荷物も見せ付けて、「こんだけの荷物を積んで走ってるねんぞ!へへーん!」という姿を見せたいくらいだった。が、車が去るとその気持ちはすぐに失せて、さっきまでの疲労が蘇ってきた。

今日はキャンプ場でゆっくりしよう・・・

あ〜あ、なんか人間って単純だね~
ていうか、男って単純だね~
ていうか、俺って単純だね~

Vol.1 FIELD-04 Episode 2