8月27日。
昨夜の盛り上がりが消えたせいか、この土地の静けさが余計に寂しく感じた。
昨晩僕がジュースをおごったお姉さんは、朝早いフェリーに乗りって帰ってしまっていた。
というより、昨日一緒に歩いたメンバーのほとんどが、その朝早いフェリーで帰ったいたようだ。
5人になってしまった昨日のメンバーで、写真を撮った。
そして、まもなく僕らが乗る船がやってくる。
僕は利尻島に行く船に乗る。
そして、このメンバーの中で僕と同じ船にのるのは少し年上のお兄さんだけだった。
僕らは桃岩荘のユースホステル、桃岩、そして昨日歩いたメンバーに別れを告げて、この地をあとにした。
僕らは甲板に出た。
港を見ると、スタッフさん達が見えた。
そして彼らは僕らのために昨日の踊りを踊りはじめた。
僕らも一緒になって踊った。
(とは言っても後ろに他の客席に座っている人が、こっち向いて座っているので、恥ずかしくてあまり派手には踊れななかった。)
恥ずかしくはあったが、たった二人のためにここまでされたことが嬉しかった。
船が港からはなれていく。
スタッフさん達の姿がどんどん小さくなっていく。
そしてその声がわずかにしか聞こえないくらい船が港から遠ざかったとき。
「また来てね~」
と叫んでるのがわかった。
こっちも
「また来るよ~」
と返した。
こんなに清々しい思いをしたのは初めてのことだった。
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やがてスタッフさん達の姿が完全に見えなくなった。
感激だったが、ちょっと冷静さを取り戻した僕ら二人は恥ずかしさのあまり甲板から海ばかりを見て、船内にいる客の方を見ることができない。
「俺は海が好きなのさ。」
みたいにしばらくの間、甲板から外を見続けていた。
利尻行きのそのフェリーには多くのカモメがついてきた。
カモメ達は人なつっこくて人が手で餌をやるとそれを直接くわえに来た。
そんなカモメたちはかわいくて、またその姿は都会では見ることが出来ない光景で、新鮮であり、優雅であり、楽しいひとときだった。
しばらくすると、ついさっきまで遠くに見えていた利尻の山が、いつの間にか大きく近づいていた。
僕らは利尻島に着いた。
利尻に着くまでの2時間、カモメたちはずっと僕らと航海のお供をしてくれた。
フェリーから降りた僕らは港からすぐ近くにある、ペシ岬という場所に行った。
そのとき、はっとした。
「あ、桃岩だ…」
とそのお兄さんが言った。
「似てますね」
と、僕が言った。
その岬は確かに桃岩を思わせるような形をしていた。
この時おそらく二人は同じことを考えたのだろう。
楽しかったひ時、バカ騒ぎしていたスタッフさんたち、あのにぎやかな世界は今ここにはもうない。
少し寂しい気持ちになったが僕は今日泊まる予定のキャンプ場まで急ぐことにした。
そのお兄さんはそのまで一緒に来てくれた。
ぼくはキャンプ場にテントを張り、必要なものだけをリュックに入れて軽装化し、この島を一周するための準備をした。
僕とそのお兄さんはキャンプ場をあとにし、坂を下りた。
二人は坂を降りるまで話を続けた。
とは言ってもそのお兄さんはバイクなのでエンジン音がうるさいのでエンジンを切って二人は話をしながら坂を下りた。
坂を下りきったとき、そのお兄さんは左側の方僕は右側の方へ進み、僕らはそれぞれの道へと走っていった。
そのお兄さん最後まで寂しそうだった。
僕と別れるまで何度も
「桃岩で会ったメンバー。ほとんど関西の人だからいいね~」
と言っていた
僕が
「そうですか?僕は関東の人の方が多いと思いましたよ。」
と僕が言うと
「いや、女の子が関西の人多かったじゃん」
とそのお兄さんが言ったので、
「なんや、女の子目当てだったんですか。まあそういう僕も昨日、みんなと住所交換したときほとんど女の子の住所しか聞いてないですよ。」
と、言うと、笑っていた。
たしかに昨日のメンバーはかわいい人、美人の人が多かったようだ。
スタッフさんもフェリーに乗るとき言っていた。
昨日のメンバーはこの夏来訪してきた客のグループの中で二番目くらい女性の質がよかったとのこと。
ちなみに一番とはどんな人達だったのだろう。
スタッフさん達の言ってたことには
「昨日のメンバーもかわいかったけど、もっとかわいい子ばかりの日もあった。そのときはあんなもんじゃなかったよ」
と。
…みんな何を言っているのだろう。
「あんなもんじゃなかった」って…(笑)