Vol.7 LOVE-01~Episode 26~


第26話
「想い出とともに」

 

8月29日、僕は稚内から南へと走っていた。

札幌であの人と会うという目的を持った僕のペースは快調だった。
海側にはまだ利尻富士、そして鳥も見えた。

予定のルートは海沿いの道から本土内側R40を走るのだが、
僕はなんとなく隣に利尻富士が見える状態を続けたかったため、
海沿いの道を選んだ。

ルートを変更したことで、必然的に今日泊まる場所も新たに探さなくてはいけなかったが、
そんなことは、今の僕にはどうでもいいことだった。
少しでも長い時間、利尻富士が見える状態を保ちたかったのだ。
あの人も一周した利尻富士がとなりにある。
そう思っていた。

天気もよく、景観もよい快適な道だった。
右側の前方にあった利尻富士がいつの間にか真横になり、
気がつくと右のかなり後ろ側まで遠ざかっていた。
僕はサロベツ原野駐車公園といいうところで一休みした。

右の遠くに、ほんのわずかに利尻富士が見えるの分かりますか?

このまま利尻と共に海沿いの道を走りたかったが、そのルートで札幌へ行くと、予定よりかなり早く着いてしまうので、
僕はここからは最初に予定していたルートに戻すように道順を組んだ。

ライダーNにキャンプ場所在地を書き込んでもらった僕の地図によると、
このまま南へ下って遠別町の朝日温泉遠別町健民センターという施設にキャンプ場があり、400円とある。
僕は今日の寝床はそこに決めた。


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僕はサロベツ原野駐車公園をあとにして再び走り出した。
ようやく遠別町に来たときは、もう夕方になっていた。

僕はR232を左に曲がって山道に入り、その施設を探した。
だが、その地図では国道や道々以外の道は細かく記載されていないため、どこにその施設があるのか迷った。
山の上には茜色の空が見えた。

このまま暗くなってしまっては、山道では見つけにくい、しかも国道以外は青色の看板表示もない
それに僕はなんとなくこの道が間違ってるような気がしたので、もう一度国道へ戻ることにした。

「そういやさっき山道に入る前の国道沿いオートキャンプ場らしき施設があったな」

少し戻ることになるのはもったいないが、僕は今日はこの山の中で寝るよりは
少しでも利尻富士が見える場所の方がいい。
そう思って国道へもどり、少し北上したところにある富士見台キャンプ場に泊まることにした。

キャンプ場は、少し高い場所にあり、見晴らしもよかった。

僕はこの施設にある展望台へ登った。

暗くなってしまって、もう利尻富士をみることはできない。

明るく照らされた場所にはテニスを楽しむ人たちの姿があった。

テニス場の明かりが消えたその後も、僕はその場所を離れようとはしなかった。

暗くて見えない利尻富士を僕はずっと探していた。

Vol.7 LOVE-01 Episode 26