Vol.3 TOURIST-05~Episode 12~

第12話
「最悪の日」

 

朝起きるとそのキャンプ場のトイレは満員御礼で、何人もの人が並んでいた。

テントを片付けて出発の準備をしている時に僕はNから

「お前にこれを授けよう」
と言われある物を受け取った。それは同じデサインで、色だけが異なる二種類の旗だった。
その旗はホクレンのガソリンスタンドで給油した時にもらえるものらしい。旗の種類は全部で三種類あってそれにはちゃんと意味もあるみたいだ。
北海道北部である「道北」では黄色を、「道東」ではオレンジ、「道南」では緑と、場所によって異なる色の旗がもらえる。
つまり、その色すべてを持っているということは北海道をだいたい一周したことを意味するのである

僕はNからオレンジと黄色の旗をもらった。
でもその色は、これから行こうとしている場所の色である。

「これから行こうとしている場所の色の旗を先にもらってもな~」
と思ったがまあ、それはともかくありがたくちょうだいした。

その後僕らは少し走り、富良野の景色をバックに僕はNに写真を撮ってもらった。
 その近くの公園で僕らはコンビニで買った朝食をとり、
そして僕らはそれぞれの目的を果す旅に向かって散った。

この北海道でNと会っていたわずかな時間が不思議にも思えた。

「奈良に帰ったらまたこのことを語ろうぜN・・」

と、僕は次へと向かい、走った。


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今日の目的地は旭川、平地で距離はここから約80kmだから余裕だ。せっかくだから僕はラベンダーを見に上富良野に行った。
ラベンダーは6月~7月が最盛んに咲く時期らしい。
8月にもなった時期に行った僕はかろうじてそれを見ることはできたが、どことなく元気のないラベンダーだった。

 ラベンダー畑を後にした僕は旭川を目指した。
「ちょっと時間食いすぎたかな・・。」
僕がようやく富良野を出たのはすでに11時くらいだった。



富良野を超えて、ポテトチップスで有名な町、美瑛町を過ぎ、旭川へ到着したのは夕方の5時くらいだた。
思ったよりも早く着いたので僕はもう少し先へ進むことにした。

「ここから層雲峡までは40km程度。今日中に層雲峡まで行けば洞爺湖の日にしてしまった1日のロスをチャラにできる。」

僕はそう思ってできるだけ走ることにした。

だが予想以上に苦しい山道だった。いつのまにか日は落ちて辺りは暗くなっていた。
しかもこの辺りは街灯もなく、道もそれほど広くない。その上トラックなどが多くその車は異常な速度で絶え間なく走ってくる。
 
 僕は前後の双方から高速で走ってくる車に危険を感じた。「こんな自転車の小さなライトなど車に乗ってる人の目に入ってくれるのだろうか」と思いながらも、

「とにかく早く、層雲峡へ」と僕は先を急いだ。

 
Vol.3 TOURIST-05 Episode 12