Vol.3 TOURIST-03~Episode 11~

僕はその人たちとの話に夢中になりすぎていて、Nと会うことをすっかり忘れていた。

「あかん!!はよNを見つけやんな。もうすぐ暗くなってしまう。やばい!」

とあせりながら狩勝山を下りきったその時、

僕の真横を一台のオフロードバイクが通過し、僕の目の前で止まった。

        「?????」

        「Nだ!!!」

N:「お前の実家に電話したらここを走ってると聞いたから。」
僕:「N!なんかこんなところで俺らが会うと変な感じやな。現実に引き戻されたみたいや(笑)」

N:「お前のペイントしたゲンゴロウヘルメット見たとき一発でお前と分かったわ(笑)」
僕:「俺もお前の安売りバーゲンみたいな数字のナンバープレート見てすぐにお前と分かったわ(笑)」

と地元の奈良で親しくなった友達Nと無事再会することができた。

 同じ地元である奈良県の同じ高校で知り合い、学校の授業でも共に同じ時を過ごした者同士だが、北海道というこの場所で今改めて再会したことにはとても新鮮な感じがした。

Nが今までとは違って見えた。

僕はバイクである彼に気を使って
「先行っといて。」と言ってNを先にキャンプ場に行くように指示した。

そして僕はいったん一人となり、自分のペースで走ることにした。二人の目的地である「かなやま湖畔キャンプ場」まではそう遠くはない。楽勝だと思った。

だが僕は昼食に食べたラーメン以来何も食べていなかったという重要なことを忘れていた。

夢中になってチャリダー達としゃべって、その後すぐにNと出会った僕の心は興奮しっぱなしだったためお腹がすいていることにさえ気がつかなかったのだ。

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僕はダウンしてしまった。
全く力が出なくなった。
チャリダーにとって山道での空腹は命取りにもなりかねないのに・・・うかつだった。

僕はかろうじて昼のうちに買っておいた少しのオニギリがあったのでそれを街灯の下で食べた。
そしてまた少し走ることができるようになった。

Nは僕の到着の遅さに心配してくれたのか僕を迎えに来てくれた。
そしてチャリに乗る僕の背中をNにバイクで押してもらって僕は楽にキャンプ場まで着いた。
(いや~情けない。)

キャンプ場に着くとNは僕のために夕食の弁当を買ってくれていた。

「お前は多分食料に困ってるやろうと思ったからやるわ。」と言って。

僕はその弁当をありがたくいただいた。
Nはこういうところが気のきくイイ奴だった。

ところでNのテントはめちゃくちゃ狭かった。ちょっと入らせてもらったのだが大人一人だけがようやく寝ることのできるまさしく「一人用テント」だった。(チャリの僕でさえ荷物を置いたりするため二人用のテントなのに)

僕らはちょっとだけ語り、そしてそれぞれのテントで寝ることにした。
 
Vol.3 TOURIST-03 Episode 11