Vol.5 TOP-09~Episode 22~

第22話
「さらに向こうへ」

8月23日、見知らぬ人の家で目が覚めた僕はそのオッちゃんと奥さんに挨拶をして次の目的地に向かうつもりだったが、その前に写真を撮ろうと思って、カメラを取り出した。
しかしカメラは動かず、どうやら故障してしまったらしい。
昨日の雨が影響したのだろうか。
僕は新しいカメラを買うと同時に今までのカメラを家に送ることにした。
そのためにもう一度紋別市街にに行く必要があった。

僕が紋別市街にいこうとしたとき、「雨が降ってるから」と言って奥さんが車を出してくれた。

こんなことまでしてもらって本当にどうお礼を言ったらいいのか分からないほどだった。

紋別市街から帰ってきた僕は今度、ちゃんとしたお礼の手紙を書こうと思ってそのオッちゃんの住所を聞いた。

別れる時そのオッちゃんは

「また来いよ、でも今度はバイクで来いよ。もう自転車はしんどいだろう。」

と言ってくれた。
僕はそのオッちゃん夫妻の写真を撮らせてもらったら、丁重にお礼を言ってまた走り出した。

昨日、オッちゃんの家で見た天気予報では今日も一日中雨らしいが、明日になったら天気は回復するとのこと。僕は今日一日はまた憂鬱になるけど、稚内に着く頃はイイ天気ならまあいいかと思って走っていた。

しかし雨は昨日よりもひどく、早くも帽子、靴、手袋がずぶ濡れになり、昨日と同じ状態になった。
しかも今日はその上に風も強くて最悪だった。
僕はペースを上げることもできず、ゆっくり安全に走るしかなかった。

本来昨日泊まるはずだった興部の道の駅の電車の宿を探す余裕さえなく、僕は興部を通り過ぎた。

「こんなペースで明後日稚内に着けるのか?」
と、ただ心配だった。


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そのためには今日中になんとな枝幸(えさし)町に入っておかないといけない。
僕は、多少のアップダウンのある道を、何度進んでも同じよな風景が広がっていて少しも先に進んでいる気がしないまま走った。

降り続ける雨のせいで予想以上に時間がかかってしまって、僕が枝幸に入った頃はもう暗くなっていた。
明るいうちにキャンプ場を探しておかないとまたやっかいなことになるのでそれは避けたかったが、事はうまく運ばなかった。
僕は
「そろそろ着いてもいいはずだ。」と思ってキャンプ場の看板を探した。
しかし、地図から判断してもうこの辺りにあるはずなのに一向にキャンプ場のありそうな雰囲気はない。

僕は焦りだした。

「もしかしたらもう通り過ぎたのか?」
なにせもう暗くなってしまっているので、そんなちょっとした看板などを見落としていたのかもしれないという不安がよぎった。

精神的にも肉体的にも疲れがピークになった頃、やっとキャンプ場へ通じる看板を見つけた。

「よかった。とりあえず今日は休める」

と、思い胸を撫で下ろした。
しかし、キャンプ場らしき場所にたどり着いたのはいいが、そこにキャンプをしてる人が誰もいないのだ。
よく見るとそこの案内みたいな看板があり、

「ここは無料です、キャンプ場としてご自由にお使い下さい」

みたいな内容が記されている。
見渡せば海の近くで景色もいいし、炊事場もトイレもキレイなのに、この人のなさは何故なのか、僕はかえって不安になった。
「もしかしたらここも心霊スポットなのか?」

そう思っていたらトイレの横に一台の車が停まってあったのを僕は発見した。

「ああ、よかった…、一人でも泊まる人がいて。」

と思ってそっちを見てるとその車はいきなり去っていった。

「何なんだ?ここは?」

Vol.5 TOP-09 Episode 22