Vol.5 TOP-03~Episode 20~

第20話
「羅臼岳」
僕はこれまででもここ北海道でもっと日焼けをしたかったのだが、天気の悪さと寒さのせいであまりそのチャンスがなく、短パン姿になった日も2~3日しかなかった。

僕はこの際イイ機会なので、いったん自転車を降りてそしてわざわざ短パンに履き替えて再び登り坂に挑んだ。
途中に熊の湯という有名な温泉があったがこれ以上ポカポカしたくなかったので寄らなかった。
(ていうかそんな余裕はなかった。)

上へ登って行くごとに街の景色は消え、いよいよ辺りには山しか見えない景色となった。

急な斜面と連続するカーブはまるで空に続いていくようにも思えた。

もうすぐ頂上か?と思った頃、反対側から猛スピードで下って行くチャリダーが見えた。
必死こいて登っている僕にその少年チャリダーは

「がんばってくださ~い!!」

と言うと、すぐに見えなくなった。
「なんじゃアイツは。飛ばしすぎちゃうんか?危ないな~。」

そう思ってしばらく進んだ後、僕はついに知床峠の頂上に着いた。

「す、すげ~!雲をかぶってる。」

今まで連続するカーブのせいで視界が遮られていて分からなかったが
そこにはいつのまにか巨大な羅臼岳が道の隣にいて雄大に聳え立っていた。

僕はしばらくその姿に見とれていた。

知床峠での景色を存分に楽しんだ後、僕は山を下りることにした。

さあ、ここからが自転車で山道を行くときならではの醍醐味。
登りで苦しめば苦しむほど下りでは楽になる。

人生苦あれば楽ありである。(?)

走り出した僕。
が、しかしその山の傾斜は予想以上にきつく、ブレーキをしても時速30kmはかるく出た。
そして道は長い直線となりスピードを出すには絶好の状態となった。

僕はブレーキをするのをやめてみた。

(もちろんそこは道幅も広く見渡しもきいたので十分安全を確認した上でしたことである。
よい子はマネしないように)


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どんどんスピードは上がってゆく…。

全身に強い風がふきつけてくる。

目に入ってくる景色が超スピードで次々に変化していく。

こんな細く軽い自転車ではバランスを崩してしまうとすぐに転倒してしまう。
そうなると大怪我どころでは済まないかも知れない。

恐怖がよぎった。

吹きつける向かい風がついに僕の目を開けていられないほどの強風となった。

「いい加減にしないと危ないな…」と思い僕はブレーキをかけてスピードを緩めた。

「今、いったい時速何キロくらい出てたんだ?」

と、僕はスピードメーターの最高時速を調べてみた。

すると80kmを超えていた。

以前、奈良の吉野での坂道を下った時70kmを超えて、その時もうこれ以上のスピードを出せることはないと思っていたが
今、その記録を超えてしまったのだ。

「お~怖え~、やっぱりゆっくり走ろう。」

と、僕はその後ゆるめたスピードを維持しながらゆっくりと山を下りていった。

 

Vol.5 TOP-03 Episode 20