Vol.7 LOVE-06~Episode 28~

僕はキャンプ場を探した。
が、それがなかなか見つからなかった。
なにやら広い公園があったので僕はその辺りで地図を見ていた。

ちょうど、その時、同じ場所でキャンプ場を探しているらしきカップルライダーの2人がいたので、たずねてみた。
すると、その二人も随分探したがそれらしきものはないとのことだった。

でも、僕はその公園が、キャンプ場として十分使えそうだったのでそこに泊まることにした。

ついでにそのカップルライダーのお2人さんと少し話をした。
僕が今まで40日くらい北海道を旅して最後がこの場所ということに
カップルライダーの女性がちょっと笑っていた。

カップルライダーの2人はもっといい場所に泊まるらしく、その場所を去って行った。

確かに普通は最後はユース等でみんなとワイワイ過ごすと方が楽しいと思うかも知れない。
でも僕は北海道に来て最後の日はやはりこの大地に抱かれ、静かに眠りたいものだと思っていた。
(別に死ぬという意味ではありません)
それは孤独が好きというのもあるが、せっかくここに来てるのだから、
最後は人だけではなく、この地と、この空と、
僕は話がしたかったのだ。
そう、ずっとあこがれていた、この土地と。

周りが暗くなってきた。

僕は夕飯の支度をして遠くに札幌の町を見渡すことのできるベンチに座って
この地とともに食事をした。

7月27日、僕はこの大地に初めて立った。
そして、今はろんな思い出をもらってここにいる。
美しい景色、たくさんの感動、人との出会い。
苦しいことも、少し後悔も、わずかな嫌なこともあった。

僕はそれをこの大地に報告するかのようにここにいた。

「俺は明日、この地を去るんだよな…」

しばらく札幌の夜景を見ながら物思いにふけっていると、
下の方からカップルの声が聞こえてきた。

「そうか、ここはデートスポットなのか」

でも僕は今日ばかりはその場所を譲るつもりはなかった。

警戒レベルをMAXにして、僕は
「意地でもこのベンチから離れまいオーラ」を全力で放ち食事をしていた。


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カップルは階段を上りきって、僕のいるところに来た。

その2人は僕を見つけると去って行った。
変な奴がいると思ったのだろう。
2人が去った後、僕は

「ちょっと悪かったかな」
「2人に席を譲ってあげるべきたっだかな」と思ったが、

「まあ、独り者の俺に、これくらいのわがままは許してくれ」と、
その後、夜が更けるまでずっとそのベンチで
思い出とともに街を見ていた。

静かで広くて素敵な公園だった。
最後の夜にふさわしい場所だった。

その夜、僕は心地よく眠りについた。

1996年9月3日、今日がいよいよ最後の日、
今日の夜11時30分発の敦賀行きのフェリーでこの大地を去る。
僕は昨夜、共に語り明かしたベンチ、そして最後の夜を過ごしたこの公園に別れを告げた。

僕は階段を下り、自転車の方へ向かった。

さあ、出発だ。

Vol.7 LOVE-06 Episode 28