第4話 室蘭の旅人たち-2

「なつっこい犬やな、ちょい汚くて歳老いてるけど。」僕はその犬を可愛く思って頭をなでようとした。
すると、その犬は鋭い目つきで僕を睨んだ。いや、実際は睨んでないのだろうが、なにしろ、ハスキー犬の目つきは恐いので、なでる勇気はなかった。

僕は、昼間に、昭和新山のそばのみやげ物屋で買ったバター飴をその犬にやったが、犬はそれを食べなかった。
「まあ、犬は甘い物は嫌いか・・・。でも、もしこいつが捨て犬だったら食べといたほうがいいぞ。」とは思ったが
僕は先を急ぐことにした。

僕が走り出すと、その犬も僕の後に付いて来た。

「俺と一緒に走ってくれるんか?」

そう思った僕はしばらくの間、その犬と一緒に坂を登った。
友達と一緒に走ったことはあっても、初対面の人と一緒に走ったことはなかった。まして初対面の犬ならなおさらのことである。

しかし、その犬はかなり歳老いていて、僕がペースを落としてやっと同じスピードとなるくらいだった。

ある程度まで坂を登った所で下り坂になり、僕はゆっくり付いて来るその犬のスピードに合わせることができなくなり、長い下り坂を下りきったとき、もうその犬はずいぶん小さく見える距離になっていた。

「無理して付いて来んでもいいぞ。一緒に走っておもしろかったぞ、じゃあな。」

と僕は、付いて来るのを諦めそうな距離にいるその犬に伝えて、先を進んだ。

 ユースホステルの近くまで戻ってきた時、海が見えた。

夕焼けに赤く染められた海と街のネオンが輝きだして、そこには幻想的な景色が広がっていた。

「さすが!!夜景ツアーというイベントがある訳やな・・・。このあとの本番の夜景ツアーが楽しみや。」

僕は幻想的で、淋しくてどこか過去を思い出してしまうようなその景色にしばらく見とれていた。

室蘭の夕焼け

 ユースホステルに戻ってきた僕は同じ部屋に泊まるライダーのオジサンと話をしていた。

その後、いよいよお待ちかねの夜景ツアーの時間になると僕はそれに参加する人たちとともに歩きだした。

参加メンバーを見てみるとけっこう女の子が多くてよかった。よかった。

もちろん、女の子と話すのが目的でこのツアーに参加したのは今さらいうまでもないが。^^;)
まあ、僕はここ最近あんまり複数の人とは接していなかったため、そうやって男女問わず話ができるだけでも満足していた。

Vol.1 FIELD-11 Episode 3